デビケビエロ(仮)



 誘ったのはどちらが先だったか。気がついたときには二人絡み合いながらベッドに倒れ込んでいた。
 陳腐な「愛してる」なんて台詞もいらない。そこに快感があればそれでいい。そう思っていた。
 性急に互いの着ていた服を脱がせあい、露わになった素肌をぴたりとくっつけて至る所をなで回す。そのうちデビットが手ではなく唇でケビンの胸を舐め始めた辺りから、吐き出される息に甘さが加わり始めた。
「ここがいいのか」
 そう言ってわざとデビットは少しずれた所を攻める。ケビンは快感とそのもどかしさに顔を歪めながら悪態を吐くが、決して自分からここがいい、とは言わない。いや、恥ずかしくて言えないのだ。そしてデビットはそれを分かっていて焦らす。
 喘ぎ声に一段と熱が加わると、散々弄られた乳首は赤く腫れ上がったようになり、ちょっとした刺激にも敏感に反応を返すようになる。嫌らしい身体だなお前、とデビットが嘲笑するが、その声はケビンにはもう届かない。朦朧とする意識の中で思い描いているのはデビットか、それとも誰か他の女か。それをデビットが知る術はない。
 そうやってケビンはいつもデビットを煽る。ケビンは気持ち良くなると目を閉じてしまう癖があった。だから滅多にデビットの顔を見ることはない。それがデビッドは気にくわなかった。何度かその癖を直すように言ったのだが、無意識のうちのことらしく、効果は見られなかった。
 ケビンの全身を撫で回すようにしていると、ケビンの中心は頭を起こして先に透明な液を滲ませ始めた。デビットはそれに手を伸ばし、軽くしごき始める。今までの間接的な快感から直接的な快感へ変わったことで、ケビンの身体が跳ね、口から一層喘ぎ声が漏れた。
「うっ…あ、あっ…」
 その声を聞く度に、デビットの中心がドクン、と疼く。いつの間にか自分のそれも勃ちあがっていたことに気がついた。中の良さを知っているそれは、早くケビンの中に入りたいと言っているよう。性急な自分の身体に苦笑しながら、デビットは手の動きを早めた。
「ぁ、うぁあ…!んっ、くっ…」
 乳首を弄っていた手を離して両手でそれをしごけば、陥落するのは時間の問題だ。現に先から漏れる液の量は次第に増え、それが擦れ合って卑猥な音を立てている。手に絡みついたそれをそっと後ろに持って行くと、そこはまるでデビットの侵入を待ちわびているかのように、ひくひくと痙攣していた。
「デ、ビット…ん、も、もう…」
 ケビンがそう言った次の瞬間、デビットの手の中でケビンのそれが弾けた。何度も脈打ちながら白い液が吐き出されると、それはケビンの腹の上に小さな溜まりを作る。荒い呼吸を続けるケビンの口を塞ぐようにキスをして、その溜まりを指ですくい上げた。
「ほら、舐めろ」
「い、やだ…」
 ケビンの鼻先に突きつけるようにすると、ケビンは首を振って顔を背けた。
「自分の出したもんくらい自分で始末しろ」
「煩い…」
 怠そうにしながらもケビンは身体を起こしてデビットの腕を掴む。そして、ぐいと引き寄せて唇を重ねた。角度を変えて何度も何度も執拗に口内を蹂躙していく。
 お互い息が上がるまでキスを続けてから、デビットはケビンの吐き出した液で濡れた指を後ろに侵入させた。途端に指は締め付けられる。
「早く入れて欲しがってるぞ、変態が」
「お前に言われたくねえよ」
「じゃあやめとくか?」
 そう言うとケビンは頬を膨らませた。本当は入れて欲しいに決まっている。けれど恥ずかしくて言えたものではない。
「馬鹿野郎…」
 その間にもケビンの中に入った指が動き回って刺激を送ってくる。むずむずするような感覚に身を震わせ、哀願するような目でデビットを見ると、デビットはにやりと笑った。
「どうする?」
「…くっ、言うよ、言えばいいんだろ!!」
 一度果てたはずの中心は、再び堅さを取り戻しつつあった。ケビンは恥ずかしさで顔を赤くしながら、小さい声で呟く。しかし、デビットに聞こえるはずもなく、
「もっとでかい声で言えよ。普段あんなにでかい癖に」
「お前最近意地悪いぞ…」
「俺は昔からこうだ」
 嫌ならやめたっていいんだぜ?と言うと、やけくそになったらしいケビンは、
「お前のペニスを…俺の中に入れてくれ…」
「望み通りにしてやるよ」
 ケビンがそう言うと、デビットは指を抜き、ケビンの腰を掴むと自分の方へ引き寄せた。そして一気に自身をケビンの中へ埋め込んだ。
「うぅ…」
「動くぞ…」
 一度奥まで沈めると、じーんとした感覚がケビンを襲う。それが痛みから来るものなのか、それとも快感からなのかは分からない。
 強い締め付けに思わず吐き出しそうになるのを我慢して、デビットはゆっくり動き始めた。動かすたびに粘膜が絡み、一層快感を引き立てる。ケビンが感じるという奥の方を重点的に攻め続けると、ケビンの口から喘ぎ声が漏れ始めた。
「んっ…あっ…」
 再び頭を持ち上げ始めたケビンのそれが快感を表している。また、デビットも締め付けによりかなりの快感を感じていた。何度か波をやり過ごし、ケビンが限界を訴え始めた頃、ぴたりと動きを止めた。
「な、なにしてんだよデビット」
 早く、と言うケビンの耳元で、
「イきたいのか?」
「そりゃイきたいに決まってんだろ!」
 何を聞くんだ、と言いたげなケビンに、それなら、とデビットは言う。
「俺を見ながらイけ。目を閉じるな」
 お前をイかせてやるのは、この俺だということを忘れるな。そう耳元で言ったかと思うと、片方の手で閉じたケビンの目を開かせた。
「…そんなことしなくても、分かってるって。オレにはお前しかいねえよ、そうでなきゃこんな事してねえよ」
「そうか」
 デビットは再び腰を動かし始めた。普段は目を閉じてしまうケビンも、一生懸命開けていようとしているらしく、まるで眠いのを我慢しているように目を瞬きさせている。それが愛おしくて、デビッドは動きを早めた。
 何度か最奥を突き上げた時、ケビンが先に達した。ぱたぱたっと音を立てて辺りに白濁した液が飛び散る。続けてデビッドがケビンの中で果てた。
 肩で息をしながら、デビッドはケビンに向かって倒れ込む。
「おい、ついちまうぞ」
「後でシャワー浴びればいいだろ」
 一緒に?とケビンが言うとデビッドは頷いた。
「冗談じゃねえ!」
 洗ってやるよ、中まで綺麗にな。デビッドはそう言うとケビンに口づけた。されることを思うと嬉しいのか嫌なのか分からなかったが、まあいいか、と心地よい気怠さの中でケビンは思った。