045:年中無休(OB デビケビ)
部屋に電話のコール音が鳴り響いた。
それをベッドから生えた手が乱暴に掴み、ずるずるとシーツの中へ引きずり込んでいく。そして、受話器を取ると、いかにも今起きました、という声でケビンは電話に出た。
「…もしもし?」
「ケビン、応援頼む、今街で強盗が暴れてるんだ」
電話の向こうから同僚の声が聞こえてきた。どうやら外からかけているらしく、後ろが騒がしい。
「オレ今日休みなんだけどよ…」
「同時に発生した事故処理で所員が出払ってるんだ!南大通りの23番地、早く来てくれ!」
そう言うと、がちゃんと電話が切れた。状況が掴めず暫くぼんやりと電話を眺めていたが、のろのろとベッドから抜け出して服を着替え始めた。本当は行きたくなかったが、これで同僚に殉職された日には夢見が悪い。
「…どうした」
「わりぃ、ちょっと仕事入っちまった」
シーツから顔を覗かせたデビッドに謝って、部屋を出て行こうとしたケビンの腕を、デビッドが掴んだ。
「何だよ」
「行くな」
「仕方ねえだろ、強盗が暴れてるって言うからよ。同僚に死なれちゃオレが困るし」
それでもデビッドは手を離そうとせず、逆にぐい、と自分の手元へ引き寄せる。その反動でケビンは体勢を崩し、ベッドに倒れ込んだ。
「何するんだ、この馬鹿!」
早く行かないとまずいんだと騒ぐケビンに、デビッドは耳元で、
「…いつ帰ってくる?」
「分からねえ。事件が解決したらすぐ戻るさ」
「警察ってのは、厄介だな」
「市民の平和を守るため、一応年中無休だからな」
じゃあ、行け、と手を離した。嫌にあっさりしたものだとケビンが思った矢先、
「帰ってきたら俺のために年中無休で奉仕しろ」
「…オレ、お前の前じゃ警察じゃないんだけどよ…」
仕方ねえ、分かったから帰ってくるまで大人しく待ってろよ!と言ってケビンは部屋から出た。昨晩デビッドに散々奉仕しただけに、まだやるのかと少々うんざりしたものの、
「まあ、帰ってからの事は帰ってから考えればいいさ」
そう言って事件現場へ向かって走り出した。