037:スカート(OB ジョシン)



 物陰に隠れて互いの唇を重ねる。
 寂れた裏路地に人影はない。背後には冷たい壁。火照った身体にその冷たさが心地よい。
「んっ、ん…」
「あまり声を出すと人が来るよ…」
「それは、あなたがっ…っん」
 睨み付けても相手は怯むことなく手を進める。自分でもそれは効果のない睨みだと分かっている。紅潮した顔で、潤んだ瞳で睨み付けてもちっとも怖くない。
 身に付けているのはいつもより心持ち短いミニスカートに、身体にフィットしたカットソー。こんなそそる格好で外を歩くなんて、間違っているよとジョージは言った。それは自分でも分かっている。分かっててこの格好で来たのだ。
 普段のジョージからは想像もつかないほど、荒々しい動作で首に噛みつかれる。そのままゆっくり下まで降りてくる動作にくすぐったさを覚えて、シンディは身を捩った。
 どうしてこんな事になってしまったのだろう。今日はいつもと同じデートの筈だった。それがどうだ、こんな薄暗い路地裏で二人いやらしい事をしている。
 けれど、その普段とのギャップが余計に自分を煽っているということにシンディは気がついていない。
「ね、ねえ、続きは帰ってから…」
「駄目だ、我慢できない」
「そんなぁ…」
 提案を簡単に却下されて、シンディは困った表情を浮かべた。こんな所を他の人に見られるわけにはいかない。まだ本能に理性が勝っていた。
 そんなシンディの心配を知ってか知らずか、ジョージの唇は更に下へ降りてくる。そして、シンディの身体を支えていた手の片方を、ゆっくり下へ向けて下ろしていく。腰を撫でて、そのままヒップへ。そしてその手はスカートの裾に掛かった。
「ま、待って…ジョージ、お願いよ」
「本当に?このまま止めてもいいのかい?」
 今日のジョージは少し意地悪だった。普段の紳士面は影を潜め、男の顔になっている。普段からジョージの事は異性だと認識していたが、これほど積極的なジョージを見るのは、初めてだった。
「身体は正直だ。自分の心に聞いてごらん?」
 ここでやめてもいいのかい?ともう一度問われて、シンディは軽く唇を噛む。既に身体は熱く疼き、ジョージの手に触れて欲しいといっている。けれど、その事を口にするのは、あまりにも恥ずかしい。
 シンディの返事がない事を了解と取って、ジョージは手の動きを再開した。タイトなスカートはシンディの形の良いヒップをより綺麗に見せている。そのスカートの裾を少しだけ持ち上げて、ゆっくりとジョージの手が侵入してくる。熱い手が腿を撫で上げる感触に、シンディは思わず身震いした。
「いやっ…!」
 微かに漏れた悲鳴もすっかり濡れて、ジョージを煽る事しかしない。片手でシンディを支え、もう片方の手はゆっくりとスカートの中を侵食していく。声が漏れないようにと時々唇を重ねるが、荒い呼吸の前にそれは意味をなさなかった。
 いつの間にかスカートはたくし上げられ、太腿が外気に晒されていた。ジョージはそれを自分の身体で上手く隠し、シンディに向かって微笑む。
「大丈夫。誰にも君の姿を見せはしない」
 壁と肌の間を隔てていたスカートを捲られ、直接肌にざらざらした壁の感触が伝わってきた。身体の熱をそこから逃がすように、シンディはわずかに後ずさって壁に身体を密着させる。何より、足に力が入らなくなってきていた。
 ジョージの手はゆっくり、ゆっくりスカートに隠されていた部分を撫でていく。太腿の外側から内側へ。中心を通り、そして反対側へ。しかし、最も敏感なところには触れようとしない。上手くそこをかわしていく様子に、シンディはじれったさを覚えた。
「ねえ…ジョージってば…」
「なんだい?」
 シンディが何を言いたいのか、ジョージには分かっているはずだ。それでも、気がつかない振りをして、同じような愛撫を続ける。
「今日は、なんだか意地悪なのね」
「そうだよ。君から言わないと私は何もしない。して欲しいことを口に出して言ってごらん」
 いつの間にか片方の手が上着の中に侵入してきていた。突然冷たい手に胸を撫でられて、思わず変な声を出してしまう。支えを失った身体はくの字に傾き、ジョージに抱きつくような格好で身体を支えるしかなかった。
 ますます手の動きは激しくなり、シンディを煽り続ける。しかし、決定的な何かが足りない。ぎりぎりの所で止められている事に我慢できなくなったのか、とうとうシンディはうわごとのように呟いた。
「おねがい…中も触って…」
 ジョージの肩に顔を埋めるようにして言うと、ジョージは少しだけ笑って、いいよ、とシンディの額にキスをした。そして今度は唇にキスをする。貪るように何度も何度も角度を変えて、舌を絡め合う。
 その間にスカートの中の手がシンディの中心をゆっくりとなぞっていく。周囲から中央へ徐々に近づいていく指を導くように、少し足を広げた。途端にじわりと中から何か出てくるような感覚がして、思わず足を閉じそうになったのをジョージの手が阻む。
「触って欲しくないのかい?」
「…ううん、違うわ…」
 つぷり、と濡れた音が聞こえた気がした。柔らかい中にジョージの指を感じて、全身に快感が走った。もっと荒々しくてもいいと、シンディは無意識のうちに腰を振る。その動きに誘われるように、奥へ指が入ってきた。
 ジョージの指は中で円を描くようにシンディの内壁をなぞっていく。指が動くたびに走る快感に、シンディの足は限界を訴えていた。今にも座り込んでしまいそうなのを一生懸命耐えて、ジョージにしがみつく。
「ん、んんっ…ジョージ…」
「我慢できない?」
 優しい口調とは裏腹に、ジョージの指はシンディが一番感じるところを避けるように動いていた。それでも十分気持ちよかったが、このまま終わられてはずっと身体が疼いたままになってしまう。それは避けたかった。
 自分の気持ちいい位置に指が当たるように腰を動かすが、それを察したジョージもするりと指を動かしてしまう。何があってもシンディに全て言わせるつもりのようだった。しかし、まだ少しだけ羞恥心が残ったシンディは、それを口に出すことが出来ない。
 胸の刺激と相まって、中はますます濡れていた。ジョージが指を動かすたびにくちゃっと粘つく音がする気がして、自分の事ながら耳を塞ぎたくなった。中をかき回す指は次第に増え、もう三本が中で動いている。
「次はどうして欲しい?君が言うとおりにしてあげるよ」
 耳元でささやかれたその言葉は、シンディの熱い身体を余計に煽った。もう我慢できないと、最後に残った羞恥心を捨てて、ジョージに懇願する。
「お、おねがい、最後まで…いかせて?」
「よく言えました」
 にっこり笑って、ジョージは指を動かす速度をあげた。そして、今まで避けていた最も感じるところを集中して攻め立てる。今までとは桁違いの快感に、我慢していた口からも声が漏れる。誰かに聞かれてしまうよ、というジョージの声ももはや届かない。
 元々限界が近かったのか、すぐにシンディは達してしまった。中がびくびくと痙攣してジョージの指を締め上げる。その痙攣が収まってから、ジョージはゆっくりと指を引き抜いた。名残惜しそうに濡れた内壁がまとわりついて、いやらしい音を立てる。
「もう、ジョージってば…」
 ジョージに身体を預けたまま、シンディは文句を言った。けれど、そんな顔で言われても怖くないよ、とジョージが言う。
 持っていたティッシュで手早く後始末をし、シンディを立たせてやると、まだ足がふらつくのか少しよろけた。スカートを下ろし、乱れた上着を整えていくと、ジョージが髪を撫でてくれた。
「今回は見られなかったから良かったけど…もうあんな所でするのは嫌よ」
「そうかい?それにしては興奮していたみたいだけど」
「んもう!」
 ずばりと言い当てられて、ようやく火照りが引いたばかりの頬をまた赤くしてしまった。さあ帰ろう、後で綺麗に洗ってあげるから、と言うジョージに頷いて、二人は帰路についた。
 手を繋いで歩きながら、さっきの行為を本当に誰にも見られてなかったか不安になったり、短いスカートだったからジョージが興奮したのかしら、とか考える。そして、恥ずかしい事に変わりはないけれど、拒否出来なかったのは私もどこかで期待していたのかもしれない、とシンディは思った。
「ねえ、ジョージ?」
「何だい?」
「スカートで興奮したの?」
 思わぬ質問に、今度はジョージが顔を赤くした。先ほどまであんなに積極的だったのに、おかしな人ね、とシンディが笑うのを見て、やられたなという表情を浮かべていた。そして、
「男にとって、スカートの中は神秘だからね」
 と笑いながら答えたのだった。