014:ビデオショップ(OB デビケビ)



深夜のビデオショップは好きだ。
やる気の無い店員、エロビデオ物色しに来た若造、そして俺たち。他から見れば、こんな時間に男二人でビデオ借りに来てるってのも目を引くだろうが、そんな事構ってたら何処も出歩けない。
適当に映画を2本棚から引き抜いて、デビッドに渡す。デビッドは一瞬タイトルを見て顔をしかめた。
「おい、こんなの見るのか?」
「いいじゃん、何でもいいって言ったのはお前だぜ?」
にやにやしながら俺が言う。勿論、分かっててやってる事だ。
「…黙れ」
悪態を吐きながら、デビッドは俺が選んだ2本を持ってカウンターへ行く。俺はその間、他のビデオを物色していたが、特に見たいのも無かったのでそのまま店を出た。
別にビデオを借りる必要は無かったんだ。単にデビッドと一緒にふらふらしたかっただけだ。
外の自販機の前で待っていると、店の袋を持ったデビッドが出て来た。そのデビッドにコーラの缶を投げてやる。
「ほらよ」
「何だ」
「飲めよ。今日は暑いな」
日中照りつけていた日差しの所為で、夜になってもまだ大気が熱を持って、俺たちの体力をじわじわ奪って行く。乾いた喉をジュースで潤しでもしないと、やってられねえ。
「ハン、珍しいな」
「おい、奢りだと思ったのか?違うな、ケチなケビン様がそんな事するわけないだろ?」
そう言って手を差し出すと、デビッドはクソが、と言って自分の手の平を叩き付けて来た。全く容赦ねえやつだ。
「いってえーな、おい!」
「行くぞ。騒ぐんじゃない」
「へいへい」
いつの間にか飲み干したらしいコーラの缶をダストボックスに投げ入れて、デビッドは俺の事なんか構いもせずにさっさと歩いて行く。全く、何時になっても愛想ってものがないやつだ。
「待てよ」
デビッドに追い付いて横に並ぶ。俺たちはあまり会話らしい会話が無い。いつも俺ばかり喋って、デビッドはあまり喋らない。喋っても短い言葉だけだ。たまには俺に愛をささやいてくれてもいいってのに。
「なあ、俺の事どう思ってるんだよ」
「別に」
「別に!?別にだって!?おい、お前、俺に夢中だって言ってたじゃないか!」
「馬鹿野郎、誰がそんな事言った!?」
デビッドが声を荒らげる。でもこれは照れ隠しだって最近気がついた。
「あーあ、薄情だよなあ。俺がこんなにも尽くしてるってのにさー」
「お前に尽くしてもらった記憶は無い」
「またまたー」
いつもこんな会話ばかり。でも、思いのほか上手くやってると思ってる。口では言わないけど、デビッドだって俺の事好きなはずだ。だって、そうじゃなきゃ一緒にいないだろ、こんな深夜に男と二人でなんて。
「まあ、口に出すだけが全てじゃないからな」
「…何言ってるんだ」
「へへ」
だから、こういう関係も俺は嫌いじゃないぜ。なあ、デビッド?