013:深夜番組(SH 桜門)



「何か面白いものでも?」
「いや、特に何も」
門倉がリビングに戻ると、桜井がだらしなくソファに寄りかかり、ぼんやりとテレビを見ていた。
「深夜の番組って、どうしてこうつまらないんだろうな」
あきれたバラエティに怪しい通販番組と相場が決まっていると愚痴を漏らしながらも、桜井はテレビを消そうとはしない。
「面白くないなら見なければいいだけだ」
ミネラルウォーターを飲みながら門倉は言った。僕にもくれよ、と言う桜井の為にキッチンへ向かおうとして、バスローブを引かれた。
「そのグラスでいい」
「駄目だ。私の飲みかけだから」
「それがいいんだ」
つかんだままのバスローブをまた引かれて、思わず門倉はバランスを崩した。それを上手く支えて、桜井はさっと門倉からグラスを奪う。
「卑怯だぞ」
「何と言われてもいいよ。僕はこういう人間だ」
君も分かっているだろう?と言って、グラスに残っていたミネラルウォーターを飲み干した。そして、口の回りについた水を拭う事もせず、そのまま門倉に口付ける。
「全く」
「まあまあ」
門倉を宥めるようにもう一度キスをする。それで門倉は桜井の腕に落ちた。